短編

剣と風
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「久しぶりだな…魔王」

俺は剣を構えた。

この時の、この瞬間の為に俺は今まで生きてきたのだ。

蒼い髪がどんよりと曇った空に靡いている。

「魔王様に刃向かうなど、この愚か者があっ!」

ビネガーが卑しげな笑みをうかべている。

ちらと魔王をみやる。

隣にいるビネガーと並ぶとやはり外見は整っているように見えた。

しかし、冷酷さと残酷さが彼を魔王と知らしめている。

「…ほう。人間ごときが私に刃を向けると言うのか…」

ゆっくりと魔王が俺の目を睨みつけた。

どこか楽しそうだ。

一瞬怯みそうになった自分を叱責し、その目を睨み返した。

「お前を打つ為に俺はここまできた…っ!いくぞ、グランドリオン!」

「そうはいかぬわっ!」

ビネガーが火の玉を投げつけてきた。

「グレンっ!」

「分かってる!」

グレンにビネガーを任せ、俺は魔王に集中した。

何故かグランドリオンを見た奴の目が一瞬だけ驚いたように陰った。

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