1/5ページ目 リーネの鐘の元。辺りは暁闇に満ちていた。 酒瓶やグラスが散らばり雑然とした空間の中、先程までの喧騒が嘘の様に在るのは静寂のみ。祭の熱気に当てられて居座っていた者達ももう居ない。 そこに静かに佇む闇色の影。その影――魔王は何かを捉えたかの様に顔をもたげ、視線をすうっと前方へ滑らせた。 ――来たか。 気配を感じ鎌を持つ手の力を少し強める。すると階段の下から緊迫した足音が近づいてきた。それ――カエルは、姿を現すと同時にゆっくりと口を開いた。 「……魔王」 低い声が魔王の耳に届くと同時に、すらりという音をたてて剣が抜かれた。それを見た魔王は数歩前に進み鎌を構え、口の端を吊り上げ嘲笑を浮かべる。 「何だ…お前は私を倒す事を諦めたのでは無かったのか?」 一歩前に出る。切れ味を確かめる様に、鎌は空間を数度裂いた。 「ハッ、笑わせらぁ。俺がお前を殺らなかったのは、他にお前より強い敵がいたからだ」 間合いを取る様に、一歩下がる。剣の切っ先は標的の左胸に向けたままで。 「聞き捨てならんな。ラヴォスは私…達により葬られた」 達、と付けたのは心情の変化なのだろうか。主の変化を哀しむ様に、数多の絶望を宿した鎌は薄闇の中で怪しく刃をぎらつかせた。 「ああ。それは間違っちゃいねえさ。だから今は……」 剣を、大きく振りかぶった。 「てめぇを倒すッ!」 キィン! 澄んだ音が響く。続いて数回。 剣と鎌が交わった。同じくして紅と金の視線が交錯する。 一瞬の間。互いを牽制する様に睨みつけ、そのまま二人は後方に飛びずさった。 「…フン。酒の所為で剣筋が鈍ったようだな」 「あんな酒くらいで潰れる程落ちちゃねぇ。…そっちこそ大分鈍ってるんじゃねぇか…――ッ!」 突如辺りに広がった炎の輪にカエルが怯む。素早く水泡を魔王に向けて放ったものの、熱の為にすぐに霧散してしまった。 魔力で勝負するのは無謀と考え、カエルは霧と炎の間を縫って飛び出した。術を唱える為に無防備になった魔王の懐に切り掛かろうとしたがすんでの所で弾かれる。 「不意打ちとは卑怯だな、魔王ッ!」 「お前の甘さが招いたものだろう?」 「……そういうお前も、集中力に欠けるんじゃないか?」 「―ッ!」 不意に力が込められた鋭い一撃に魔王の身体がぐらついた。瞬間、一寸先を剣先が掠める。銀の長髪がほんの一房地に落ちた。 体制を立て直した魔王の眼光が鋭く光った。次の瞬間、また何度も二つの刃が重ねられる。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
w友達に教えるw [編集] 無料ホームページ作成は@peps! |