1/5ページ目 ――ある冬の夜。 キンと冷えた漆黒の空間に、青白い月光が雲の切れ目からうっすらと降り注いでいた。 クロノ達が泊まっている宿から少し離れた場所、その黒に溶け込むように、立ち枯れた木を背にして佇む人影があった。 月光が彼――魔王の銀の髪を妖しく照らしている。 …月光を浴びると安堵するのは、体質からだろうか。魔王は思案する。 答えは出ないが、どこの世でも、魔の者は夜を好むのだろう。 時折吹く身を切るような風が吹き、白い息が立ち上る。マントが風に揺れてはためいた。 冬の夜だ。多少冷えるが、先程日が落ちる前に居た山の頂より、数段温かい。それに元来魔族の身体は強いものである。我慢できない程ではなかった。 …まぁ、例え凍てつく様な寒さであったとしても、魔王に一行が泊まる宿に戻る気は無かったのだが。 ――喧噪は、好ましくない。 ただでさえ口数が減らない奴らだというのに、今日はそれに輪を掛けて騒がしかった。 理由は明解だが、その場に自分がいる意味は無い筈だった。奴らの仲間になったのは、偶然のような損得感情の一致なのだから。 …仲間が蘇ったことへの祝いは、奴らの内でやるのが良いだろう。 そう思い、目を閉じた。瞼の裏側に一瞬月の燐光が煌めく。 まだ、夜は長い。だが、幾許かの時が経った時、 「――魔王?」 背後から声が響いた。警戒心を解いていた魔王は、ハッと後ろを見遣る。そしてその姿を捉え、すぐ力を抜いた。 「……貴様か…」 「あら、誰だと思ったの?」 ルッカが含み笑いを浮かべる。 魔王はフン、と視線を反らす。そして然も機嫌が悪いというように尋ねた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
w友達に教えるw [編集] 無料ホームページ作成は@peps! |