本編

消えた王女
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「…マール…?」
クロノの指がつい一瞬前まで彼女がいた場所をなぞる。

「どうして…」

「クロノ!」

途方にくれて床に膝をついたクロノは聞き覚えのある声を聞いてハッと顔を上げた。

「ルッカ!!」

「やっと見つけた!全く、勝手にずんずん進んでいかないでよ!探すのたいへんなんだから!」

ルッカはハァハァと肩で息をしている。

「ゴメンゴメン。俺はただ…」

口ごもるクロノにルッカがぴしゃりと言う。

「それより、あのコは?ここにクロノがいるって事はてっきり一緒なんだと…」

「それ、が……消えたんだ」

「何ですって、消えたあ!?」

ルッカが何かを考えるように腕を組む。

クロノと同じ癖だ。

「……やっぱりね」

「やっぱりって、何が?マールの居場所で思い当たるところが!?」

クロノが目を輝かせる。

「あのコが消える時、どっかで見た顔だと思ったのよ」

ルッカが辺りを見渡す。

「ここは王国は王国でもずいぶん昔の王国みたいね…」

「それは俺も気付いてた。そんなことより質問に答えろよ、ルッ…」

「あのコは」

クロノの言葉を遮り、ルッカが続ける。

「自分のご先祖様に間違えられたってワケよ。つまり、あのコは私達の時代でもお姫様……」

ルッカが一瞬迷うように空中を見やった。

しかしすぐ確信の視線に変わる。

「マールディア王女なのよ!」

「…ええっ!?そ、それ。間違いないのか…?」

「間違いないわ。前に国王主催の催しがあったとき顔を拝見したもの。あのコはマールディア王女、現ガルディア王33世の娘」

「そんな」

クロノはふと思い出した。

お祭りでからかったつもりで言った「お姫様」と言う単語にマールはとても驚いていた。

「マールディア王女はこの時代の王妃の子孫なの」

ルッカが持論を展開し始めた。

「この論時代の王妃がさらわれた…。本当は誰かが助けることになっていたはず。でも歴史はこの時代にマールディア王女が現われ王妃に間違えられたために本物の王妃の捜索が打ち切られてしまった。もし王妃が殺されてしまったら…。マールディア王女の存在が消えてしまうの……。そう、元からこの世に居なかったということになるわ」

「マールが存在していた事自体が無くなってしまう?」

「その通り。もしかしたら私達が私達の時代に帰ったらマールディア王女の記憶さえも無くなってしまうかも知れないわ」

クロノが立ち上がった。

「そんなの、許されることじゃないだろ!何とかしないと…!」

「まだ間に合うかもしれないわ。今からでも王妃を助け出すことが出来れば歴史は元に戻るはず!!…とにかく本物の王妃の行方を捜さなきゃ!」

クロノは力強く頷き、二人は駆け出した。

階段を一気に駆け下り城を出ようとしたとき門の影に大臣の姿があった。

「何故、戻ってこられた。一人であそこから抜け出せるはずが…」

ぼそりと大臣が呟いた。

疑問に思ったクロノが声をかけようとする。

「あの…」

「…!お、お主ら、そこで何をしておる!わしの後ろに立つでない!」

「あ、すみません」

「全く、失敬な!」

大臣が踵を返して森の中へと入っていく。

「…様子が変ね…だいたい森の中に何の用があるのかしら」

「うん。とっても気が立ってるみたいだし。なんか…気配が禍々しい」

「こうなったら」

ルッカがにやりと笑う。

「尾行するのよ!」

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