魔王様に捧げる20のお題

1.守り
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「王子の誕生だ…!」

「このジール王国にもようやく王子が」

「その上強大な魔力を秘めているらしい…」

がやがやと騒ぎ立てる廷臣たちにジールは静かに語りかけた。

厳かだが凛としていて、優しさを含んだ声だった。

「今日はめでたきジール王国の王子誕生の日じゃ。宴を開き、大いに祝おうぞ」

赤ん坊をあやしながらジールがそう言うと廷臣達は喜びをあらわにし、宴の準備へと取り掛かった。

ずっと部屋の隅で赤ん坊を見ていたサラが、しずしずとジールに近づく。

サラに気付いたジールがおお、と声をあげる。

「サラ、お前と10歳違いの弟じゃ可愛かろう?」

「ええ。とっても可愛い。ね、母様、抱いてみても?」

「勿論だとも。そうじゃサラ、この子の名づけを頼みたいのじゃ。わらわには良い名が思いつかなくての」

ほれ、とジールがさらに赤ん坊を渡す。

サラは無垢な表情をして眠っている赤ん坊の顔を愛しげに見つめた。

その奥に感じる、力。

「凄い魔力ね…」

「まだ、片鱗しか見せておらぬが、もしかすると成長すればお前を越ゆるやもしれぬ。流石ジールの血筋とも言うべきか」

満足げに笑うジールを横目に、ジールが感じていない力をサラは感じた。

…強い、強い力。

でもその奥に眠っている…邪気。

この子の力は強すぎて他の人を傷つけてしまうかもしれない。

否、それだけではなく自分自身も。

「……ジャキ」

「ジャキとな?」

ジールがサラを見る。

サラは弟を抱きすくめなおも続けた。

「ジャキ、それがこの子の名前。何故だか分からないけど、そう決められてるの…」

「お前がそう言うのなら、間違いなかろう。…さ、お前もジャキをつれて宴に行って来い。わらわは疲れた。部屋に戻って休ませてもらうぞ」

サラはその腕に弟を抱き、まだ覚醒すらしていないその力を思い、そっと呟いた。

「…私が絶対に貴方を守るわ。ジャキ」

幼き少女は、そう心に誓った。

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