1/2ページ目 少年達が空間の中で倒れ伏している。 だが、もうそれすらも俺の目には入っていない。 そう…目の前に映る敵が、余りにも強大すぎて。 沸きいでる、怒りと歓喜が混ざり合ったような混沌とした感情。 「どれほど待ちわびた事か……この時が来るのを!!」 奴はただそこに在った。 俺の中にある奴の記憶と全く同じ様に。 「久しぶりだな、ラヴォス……」 搾り出した声は、震えていた。 やっと…。 やっと、此処まで…! 「遠いあの日、俺は誓ったのだ……。貴様だけは、この手で叩き潰してやると……!」 そう、その為だけに生きてきた。 「例え、その為に何を失うことになろうとも……!!」 刹那、サラの表情が脳裏を過ぎった。 その残像を打ち払い、奴を見据える。 「遂に、誓いを果たす時が来た。死ね…ラヴォスよ!!」 その時…地の底から這いいずる様な低い声が鼓膜を震わせた。 「出来るかな、お前に……?」 空間が強く捻れ、ジールが姿を現した。 一瞬遅れて、サラも。 素顔を晒した俺をサラはハッとした様に見ている。 何かを思い出そうとしているかの様に顔が歪んでいた。 だが、長い思考の時間は与えられなかった。 「フ、偽りの予言者めが……。お前のラヴォス様の餌食にしてくれようぞ」 狂気と狂喜に満ち足りた、眼。 それを見たサラが堪えられないと言うかの如く叫んだ。 「母上、もうおやめください!この力は人に災いしか齎しません!もうこれ以上は……!!」 「そこをどけ、サラ!ラヴォス様の偉大なる生命の力は、わらわの中に息づいておる。お前のその一部なのだぞ」 取り憑かれた様にジールはラヴォスを見遣る。 「…最早運命は、変えられぬわ!ジャマ立てしよう物ならお前も消すまで!」 ラヴォスの力を手に入れたジールにとって、恐れる物等何も無かったのだろう。 ジールから放たれた一閃にサラが絶叫して崩れ落ちた。 「キャアッ!」 「行くぞ、予言者よ!ラヴォス様の力を思い知るがいい!!」 強大な力の波動が、身体を貫いた。 瞬間。激痛が走る。 「…ま、魔力が……吸い取られてゆく……!?」 それは恐ろしい事だった。 今まで培ってきた魔力、即ち力の源が吸い取られていく様な感覚。 身体から力が抜け、一瞬目の前が暗くなった。 霞む視界で憎き者を睨みつける。 「や…やられぬぞ俺は……!ラヴォス、貴様を倒す為に……闇の中、一人生きぬいて来たのだ!!」 そう…。 全てを棄て、只唯一の目的の為に。 過去を封印し傅く者を裏切ってきた。 此処で…終わる訳には行かない。 攻撃の弱まった一瞬の隙を付き、赤きナイフを突き立てた。 …だが。 ラヴォスは力を弱める事無く、むしろ力を増してその攻撃を放った。 「バ、バカな……!?効かぬのか!?ぐああッ!!」 余りにも巨大な力の波に、弾き飛ばされ、倒れ伏す。 もう…起き上がる事すら、ままならない。 俺は一瞬にして…敗北を悟った。 「愚か者め……!ちっぽけなお前達の力等ラヴォス様には通用せぬわ!」 追い撃ちをかけるようにジールの嘲笑が響き、絶望感をより一層際立たせる。 ふと、思い付いたようにジールが言葉を漏らした。 「わらわからの贈り物だ。永遠の生命、受け取るがよいわ!ラヴォス様と一体となってな!」 身体が引っ張られる様な錯覚に陥った。 否、現実だ。 現実と虚構の区別が段々と曖昧に成ってきた。 ただ…一つだけ。 ラヴォスの胎内に吸い込まれていようとしているのは分かった。 ……サラ…! 結局、救う事が出来なかった、姉の姿が視界にちらついた。 手を伸ばそうとするが、麻痺したかの様な痺れが走り、叶わない。 嗚呼…。 運命とは、無情な物なのだな…。 否、俺の力不足が原因か…? 絶望の淵に立たされた俺を余所に、不意に揺らめいた、紅。 「ほう、やるというのか?お前に何が出来る?」 ……? 何をしようと言うのだ。 俺すらも敵わなかった相手に。 止めろ、もう…無駄だ。 ジールが少年に目を向ける。 「その傷ついた体で、只一人ラヴォス様に挑むと言うのか?」 然も面白いと言うようにジールは嗤う。 「死ねい、虫ケラめが!ラヴォス様の力を見よ!」 少年が振りかざした剣は……。 獲物を捉える事無く宙を掻いた。 放たれた力。 地に落ちた剣。 そして。 崩れ落ちた。その身体。 「クロノ……!?クロノーッ!」 絶叫した、娘。 何時の時代も大切に思う者を無くした人の叫びは……哀しく、暗い…。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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