魔王様に捧げる20のお題

12.決断
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広すぎる海の中、まるで世界に取り残されたかの如く浮かぶ小さな陸。

あまりにも小さなこの地に流れ着いたのは必然か、偶然か。

そして、目を開けて最初に見た海が幼き頃姉と見た海に似ていたのは必然か、偶然か…。

「…ぐ…っ」

身を起こそうと瞬間、激痛が走った。

あまりの痛みに声が漏れる。

だが…それ以上に痛みを訴えているのは、心。

…いくら時が経ったのだろう。

あの敗北の記憶は、まるで数分前の出来事の様でもあり、数年前の記憶の様でもあった。

だがそれは鮮明で、時が経てば経つほど濃くなっていく。

――嗚呼。

俺は……。

何故此処にいる?

何故生きている?

……解らない…。

今まで一度とて感じた事等無かった、惑いという感情。

…また、全てを奪われた。

希望等、残っている筈も無い。

…否、元から無かったのか。

俺のしてきた事は全て無駄。

歴史は変わること無くその針を刻む。

―痛い―

―哀しい―

―虚しい―

辺りの寒さを感じぬ程身体に冷たく染み渡った絶望。

哀しみ、憎み、戦い…最後、俺の中に満ちたのは、深い絶望のみだった。

不意に、手が腰の銀鎖に触れた。

肌よりも冷たいその感覚に、ハッと我に還り、低く小さく声を搾り出す。

「―――姉上…」

ゆっくり、激痛を感じながらも、身体を起こす。腰から外したそれを目の高さに掲げる。

所々傷付き、捻れてはいるが蒼い石はその輝きを失ってはいなかった。

蒼い石に、紅い双眸がぼやけて映る。

刹那。


ゴメンなさい……!


遠い虚空から蘇る声。

涙に濡れたその表情。

「……っ」

何を失っても守りたかった。例え命と引き換えでも良かったのに。

もう、叶わない。

…だが、ラヴォスに対する感情は昔の其れとは違った。

何も、感じない。

復讐。

それだけの為に生きてきた筈だった。

……無。

それが今の俺を示す唯一の言葉だ。

瞬間。煌り、一筋の日の光に照らされて輝いた石は、鈍く美しく光った。

それは全く、サラの双眸の色と違わなかった。

お守り。そう言って渡された一つの力。

だがそれは俺にとって、唯一と言える程の姉との記憶の結晶―――思い出、だった。

…だが、今。

孤独と成り果てた俺に、その輝きは余りにも哀しく映った。

目を背け、そっと地面に置く。

地で儚く輝いたそれは、彼女そのものを表す様であった。

無意識に天を仰ぐ。

舞堕ちる雪が孤独を包む。

―――サラ。

貴女は俺を許すだろうか。

貴女を守れなかった俺を…。

…きっと、貴女は許してしまう。

あの母さえも憎めない貴女だから。

ならば―――俺は。

自然なる死が訪れるまで、此の世に在りつづけよう。

それは、貴女に対する何の免罪符にも成りはしないが…。

それが…俺が出来る唯一の償いだ。



…闇に浮かんだ黒い影は、静かにとその場から姿を消した―――


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