魔王様に捧げる20のお題

6.孤独
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「これは…!?」

俺は思わず書物をとり落とした。

此処はビネガーの館から運び込んだ書物が所狭しと置かれた魔王城の資料室。

突然、高揚感が身を包む。

「何故…」

分厚い書物の題名は『ラヴォスの記録』

題名に驚いたのではない。第一、このような記録は腐る程あった。

どれも書いてある事は同じ…。

『遥か昔、世界を揺るがした大災害』

『強大なエネルギー源』

『地中深く眠る』

ラヴォスを神とまで記した本もあった。

…だが、これには見知った刻印がしてあった。

―ボッシュ―

走り書きのようなサイン。

しかし、あの命の賢者による物に違いなかった。

「…ボッシュ…」

あの日、俺と共に時空の歪みに吸い込まれていった。

今は何処に居るのかは想像もつかないが確かにこれは此処にある。

俺は書物を紐といた。

保護の魔術がかけてあったようだが、余りにも古く、侵食が激しい。

所々読み取れない文字もある。

俺は再生の魔術を唱え、できる限り復元した。

『この記録は…B.C12000、ジールと呼ばれる天に近い国の物である』

本が再生した事に満足しながら文字を指でなぞる。

俺は一心不乱に書物に読み耽った。

『―ラヴォス。

その存在は太古の昔より解っていた事だ。

それが具現化したのはつい最近。

そう、ほんの10年程前の事である。

天の国を統べる女王ジールが夢を見た。

赤い星と永遠の命の夢だという。

それからというもの女王は取り付かれたように『ラヴォス』について調べ始めた。

ある日女王は国民を集め、民全員に永遠の命を与えると言い放った。

『永遠の命』

なんと甘く魅力的な言葉だろうか。

永遠の命を手に入れさえすれば人はもう老いや病に苦しむ事は無く、幸せの中で生きていける。

当然の如く人々は色めき立った。

しかし、わしは長らく命の賢者という重責に身を置いている。

そこで真理を悟ったのだ。

…進まぬ命は苦しみでしか無い。

時が流れない身体は朽ちる事無く果てる。

終わりを迎えし身体は朽ち、安らかに土に返る。

安息の眠りを味わえる。

それこそが人の在るべき姿。

まぁ、女王が求めていた物は人の力では無かったが。

だが、国民にそこまで考える者は誰ひとりとして居なかった。

…そして、海底神殿建設が決定されたのだ…』


俺はそこで一度本を閉じた。

この語り口調、古代の歴史。

間違い無い。

俺は書物を手に取り、資料室を後にした。

後ろで、無造作に積まれていた本が崩れたが何も気にならなかった。
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