魔王様に捧げる20のお題

7.記憶
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―あの時から、俺の時計は進まない…。


漆黒の闇に赤い光が射す。

「ついに…完成した」

震えつつも歓喜に満ちた声が響く。

長い、長い吐息が漏れた。

それは紅く光り輝いている。

美しい…。

大地の与えた命を吸ってナイフは獲物を今か今かと待ち構えているようだ。

その刃を奴の血で濡らす…。

俺は身震いした。

刃に触れぬよう注意しながら、柄を握る。

純度の高い古代の魔力と命の力を混ぜた刃。

魔の力で構成された柄。

二つの力はある境界線を隔て、完全に分離されている。

古代の力を俺は手にする事はできない。

「…己の宿していた力が害となる日が来ようとはな」

張った声は鋭く、哀しげに響く。

…しかしそんなことは匙だ。

ようやく、ラヴォスを倒す為の物が長い年月を経て完成した。

だが…今考えれば、まるでナイフを作りはじめたのが昨日の様に感じられる。

それ程、俺の周りは変わっていない。

魔族の身体はある一定の段階まで成長を早めると、その成長を止めるらしい。

その所為か、俺の身体は殆ど変わっていない。

戦乱も続いたままだ。

何故、人間がこれ程までに生きながらえているのか。

答えは簡単だ。

俺が直接手を加える事は、森を火の海に変えた時以来、全くしていない。

人間の力を一気に消滅させてしまえば、ナイフに取り込む前に消えてしまう力も大きかったからだ。

…餌とする大地に人間がいなければ哀しみは生まれぬ。

俺は此処をラヴォスが興味を示さない大地に育てるつもりは無かった。

……全て、上手く行っている。

このまま何も起こらねば、な。

俺は剣を鞘に収め、椅子に腰掛けた。

激しい疲労感と満足感が、身体を支配している。

「…長かった…」

声は、静かに、厳かに響いた。


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